ランマ付の掃き出し窓

 わが家の間取りはすこし昔風なところがあります。内縁(うちえん)とも言える1間の廊下を挟んで、食事も就寝もしている主室のタタミ8畳間があります。8畳間と廊下とは障子で区切られ、廊下には掃き出し窓がついています。そして、障子と掃き出し窓にはそれぞれ小窓の「欄間(ランマ)」が付いています。

 朝起きると最初の仕事は、掃き出し窓の雨戸を開けて、ランマの小窓を開けること。廊下の奥は台所とつながっているので、朝食の用意や、弁当の支度を始めて換気扇を廻し始めれば、小窓を開けないと排気がうまくいきません。小窓を閉めたまま魚を焼き始めようものなら、たちまち家中に焼き魚の匂いが立ちこめてしまいます。

 なぜそんな事になるかと言えば、今ごろの住宅では必ず付ける24時間換気などの給気のための開口がないからです。ですが、ブロロロロッと廻る換気扇の風量を思うと、直径10センチの換気穴が一つ二つで給気は足らないのでは?と正直思うところ。朝夕の食事準備の前、小窓必ず開けて新鮮な空気を入れる行動が、わが家では当たり前の日常になっています。

 掃き出し窓の向こうには、小さな庭を挟んですぐ公道です。しかしランマは目線の上にあるので、全開しても道行く人の視線は気になりません。向かいのお宅の2階からだとどことなく覗けなくもありませんが、ほとんど気にならないぐらいです。ランマのお陰で、心地よい季節なら気持ちよく窓を開けて過ごすこともできるのです。
 エアコンを掛け始める前の初夏なら、掃き出し窓と8畳間障子の両方のランマを開ければ、主室にも適度な風が入ってきます。こうした季節なりの使い方ができるのは、どことなく家と共に暮らしている感じがします。

 そんなこんなで、わが家の「ランマ付の掃き出し窓」をとても気に入っているわけですが、なぜだか、人様の住まい設計に取り入れたことがない! 昔風のすこし野暮ったいイメージが無くはありませんが、窓のカタログでは何度も目にしていたはず。なのに、これまで図面に落とし込んだことが無いことに、今更気がつきました。
 しかし、最近の窓カタログでは見た記憶が乏しい。改めて確かめてみると、昔からある窓シリーズにこそあれ、最近のシリーズ(特に断熱性を謳う窓)には記載が見当たりません。

 気になって某メーカーのHPから問合せてみると、「誠に恐縮ですが、ランマ付引違い窓はご用意が無いのが現状です。販売量が減少した為、廃番となってしまいました。」との回答。別メーカーで問い合わせても、「(××シリーズであれば)装飾引違い窓を段窓して頂く事にてランマとしてご使用頂けます。採用して頂く予定の窓サイズによって制作可否が変わってまいります。」との回答。
 んんん、ともかくほぼ標準では無いということだ。回答の通り需要がないのか。はたまたメーカーサイドの製品絞り込みなのか。それとも断熱性能が確保しづらい形状だからなのか。採用においては不用意に描けず、確認と注意が必要にならざるを得ない。

 これまで自分の設計にセレクトしなかったとは言え、定番商品な気がしていました。それが、無くなるとは思いもしなかったことです。設計上で替わりの工夫はあるでしょうが、自分が実際、便利に思っているので寂しいばかりです。
 わが家のランマ付引違い窓はいずれ遺物となるのでしょうか? 換気の事がコロナ関連のニュースで毎日取り沙汰されるこの時勢に、復活はないのか? 密かに期待するばかりです。

たくさんの型ガラスで肩こりました。

昨日は建て替え計画を進めている解体前の古家で、某テレビ番組の匠のごとく、沢山残るガラス障子にはまっている型ガラスを一枚一枚外す作業を一日中していた。今はおそらく手に入らないだろうチョッと変わった模様の型ガラス。解体されて粉々にされてしまうのは余りに忍びなく、新しい建物にいくらかでも使いたいと思い、施主さんに都合をつけてもらってせっせと寄せ集めた。古家に愛着を持つ施主さんにもきっとよい思い出になる。大きなガラス板はないが、おそらく使い切れないぐらいの枚数にはなっただろう。なかなか出会えないこうした経験を楽しませて頂いている。実は本日、背中や首筋が筋肉痛でクタクタです。

今日はたまたまネットで調べものをしている最中、以前の勤め先でお世話になった施主さんの屋敷が解体されていた事を知った。しかも半月前にもならない話だった。その建物は著名な建築家が設計した住宅で保存を惜しまれていた。なので偶然知る事ができた訳だけど、当時に何度か建物に入らせて頂いて、なかなか見る事ができない重厚な造りにキョロキョロしていた事も思い出した。ネットで見た解体の様子に少々ショックな気分。跡地はマンションが建つような記述も見つけ、さらにやり切れないものがありました。

他にはつい最近、お世話になった先生の自宅が建て替えられる話しがあった。ここもまた立派な日本建築だっただけにごく普通のメーカーさんにお願いされるので、身勝手かもしれないが残念な気がしてしまう。自宅そばの立派な白鹿の工場も今は無くなって、だだっ広い更地になってしまった。

古いものが新しいものに入れ替わるのは避け様の無い事ですが、今回ガラス板を残せるのは本当にシアワセな気がします。うまく使ってあげたいです。

リアルな木目柄シート材に圧倒された。

雨の日は賑やかに

今日の午後に雨降りの中、面材メーカーの営業さんがやってきた。えらく元気な口調に少々食傷辟易しかけてきたところ、カバンから取り出したサンプルに驚いた。カタログはまだ揃ってないのですが、新しい木目柄のシート材です。。。

取り出したファイルに挟まれているのは、まさしく本物の突き板のサンプルかと思えるような素晴らしい出来のニセモノだ。思わずスゲ〜〜ですね。コレ!?と驚嘆してしまった。あんたマジシャンでっか??これは一体なんなんや。日本人ってホンマすご〜い。一体何を求めているのだろうか。木目がリアルにプリントされているのは当たり前で、肌合いの凹凸がシンクロして再現されている。触っても本物?と思いそうになる。バーチャルとリアルの境目が本当にない精巧な3Dとしか言いようが無いのだ。

本当に高価な銘木を目の前にすると、多分本物どうか疑ってしまうに違いない。適当にひん曲がった安物の品の方が、きっと本物と思い込むに違いない。前の事務所でプリント天井板を長いコト本物だと思い込んでいたり、新しい事務所の聚落壁がクロスであることをすぐに見抜けなかったり、エエ加減な設計士だからエラそうな事は書けまい。と思うけどやっぱり書きたくなる。こんな世界で育ったコドモには、ホンモノだとかニセモノだとか、まるで意味が無くなる様な気がする。オトナの嘘や見栄に塗り替えられた間違った世界に、何も知らずのめり込む様な危機を感じる。やめようよこんなこと。

なのに悲しい設計士は、そう書きつつも節操なく使ってしまいそうになるのです。。。う〜ん。生きるべきか死ぬべきか。とってもムズカしい問題です。