お茶会へのお誘い

先月のすまいをトークでは、裏千家教授・宮崎宗和先生にお茶会のお話を伺いました。日本の建築も好きですから、おのずと茶道という世界はどことなく気にはなっていたものの、実のところ全く分かっていません。高校時代にも大学時代にも茶道部がありましたが、一度も出入りした事は無く、興味はあっても敷居の高いものの様にずっと思っていました。(今も思っていますが。。。)

講義の前半は茶道の歴史をずっと語っていただいたのですが、日本建築史に出て来る茶室や庭の講義で聞き覚えのある人の名前がお話の中に続いて行きます。考えれば当たり前だったのですが、茶道の講義に昔の設計者?の名前がつらつらと並ぶ様子を聞くにつれ、昔の人はマルチなデザイナーだよな〜とおこがましく一人感心していました。どことなく今の時代、建築家は建築家、デザイナーはデザイナー、茶人は茶人?と分業化しているのが普通と思われがちですが、昔の方は一貫して美の世界に通じ、いろいろな世界で活躍するのがごく当たり前な様にも思えてなりません。それは日本に限らず西洋でも同じに思います。むろん今でも多彩なマルチデザイナーやら建築家やらタレントはいますが、多芸に通じた稀なスパースターのような扱いにさえなりかねません。関係やら状況が複雑で、別な世界に脚を踏み入れる事が昔よりもエラく骨が折れるからかもしてませんが。。。

そんな昔でなくとも身近に考えれば、以前に親父の卒業文集だったかを見せてもらった時、達筆で絵も達者で文才もある人がこんなにも多いのか、すごいなと感じたことも自分の中では繋がっています。いろんなものが手に入り、いろんな情報が好きな時に得られる今よりも、生活の中に文化がずっと普通に備わっていたようにも思えます。

そんな事を書いておきながら、茶道は敷居が高いと遠のけていては何の事はありませんね。宮崎先生のその後のお話は、想像よりも茶道がずっと身近に思える様にしていただけましたが、文化を身につけるのはまだまだ骨が折れそうな気がしてなりません。

左官体験:京都府左官技能専修学院にて

左官教室
左官教室

すまいをトーク京都府左官技能専修学院に伺い左官実習を体験してきました。

現場の隅でチョロチョロと、我が家の補修でチョロチョロとぐらいは、コテをもっての左官のマネごとはしても大概は床面。一畳大の壁面を、しかも土壁を塗るという体験は初めてでした。実習の前に、学院長の西村弘三さんに京都の左官についてのお話を伺い、実習室にて実演を拝見し、挑戦する壁に向き合いました。

まず水を含ませた大きな刷毛で壁の埃を払い落し、打ち水をします。さて、塗り良い硬さに調整していただいた筈の練り合わされた土ですが、パレット(そう言えば何と呼ぶのだろう。。。)に載せた土をコテに移せない。塗る前から立ち往生です。コレがまず出来ない、と学院長さんがさも手際よくコテに土を載せる仕草を実演されていましたが、全く出来ません。ヒョイと簡単に載せていたように見えたのに。これでは壁を塗るどころでなく日が暮れてしまう。。。

後半で多少は要領は得たものの、諦めて一塗りずつ土をコテに載せ、壁に塗り始めました。。。というか、ほとんど押し付けるような状態。再び、コレがまず出来ない、学院長さんの言葉がかすめて行きます。まったく思う様に行きません。何気に塗り伸ばしていたように見えていた実演では、厚み3ミリぐらいですかね〜。だった筈が1センチぐらいモッコリしてしまうやら、塗りのこって下地が見えたままやら。壁際に至っては、控えめにという話もそれどころでなく、土を押し付けてしまう始末。新築の家でこんな事をしたら間違いなくお払い箱です。予想以上に悪銭苦闘。窓際にいたものだから、背中の陽がだんだんと暑く。汗やら冷や汗やら。

どうにかこうにか塗り終えかけたところに、学院長さんが。まだマシやね。ガクッ。本来コテ先はほとんど使わずするものらしいが、塗り残し多い端なんかをコソコソ小手先で穴埋めしてなんとか終了しました。気がつけば一時間ぐらいかかっていたのでしょうか。へっぴり腰の姿勢で、腕と腰と小手先の手がクタクタでした。全く仕事になりませんね。

左官教室で塗った壁です
左官教室で塗った壁です

日本の土は他国の土に比べれば粘りがあり、混ぜ物無しに自身で固まる性質があり左官に一番向いているそうです。四季折々の風土がある日本だからこその産物かもしれません。(ちなみに流行りの珪藻土は自身では固まることが出来ず、左官材料として使うには何か補助材になるものが必要になります。)そして重要なのが「スサ」。今回は節を取り除いた特上のものだそうですが、フサフサしています。技術を支える材料にもまた、日本のものづくりの丁寧さが現れているように思いました。

以前から気になっていた左官が左官と呼ばれる由縁についても、実習前にプリントを頂き。少しだけ謎が解明。リサイクル可能な土壁は、エコロジーの代表に違いありません。土壁を使った建物をまだ設計した事はありませんが、もっと活用すべきものだと改めて感じます。

環境と住宅 自然にやさしい木の家

shadow of a roof

すまいをトークの座学で、国産材で作る木の家を設計施工される工務店(株)コアー建築工房・吉瀬融氏の講義を拝聴しました。自然と共に共生する住宅作りを推進されています。

日本の住まいのあり方を考えれば、ごく自然に思える内容ばかりです。室内環境を空調機器に頼るのでは無く、光や風・自然の恩恵を取り込まない手はありません。情報に振り回されて、本来思い描いていた家の姿を忘れないようにしましょう。国産材を使うことで日本の山、日本の環境を守りましょう。などなど。

捉え方は人それぞれと思いますが、建築に関われば大なり小なり気に掛かる事がほとんどです。吉瀬さんは当たり前に話をされているに過ぎません。ですが普段の業務の中で、頭では分かっていてもなかなか出来ていないことや、目をつぶってしまっていること、声を大にして施主さんに提案出来ずにいることは、勉強不足から来るものだと講義を聴きながら感じています。技術や材料の進歩は日々情報として耳に入り、いつの間にかそれらに翻弄され、本質的な家作りの「当たり前」が分からなくなっているのかもしれません。

技術や材料の進歩を否定する訳では無ありません。(むしろ否定する事ができない。)ただ、設計者、施工者だけでなく施主の方々も含め、家作りに何が大切なのかをよく考えなければ本末転倒な家づくりをすることになり、一体何に満足をしているのか分からなくなります。もちろん、3者が同じ技量や土俵で話をする事は無理があります。それよりも、それぞれの立場で最良と思える最小限の意見や理想をぶつけ合えるコミュニケーションの場が必要なのでしょう。

数字に表せないところに住まいの本当の良さがあると信じています。と吉瀬さんと話の中にありましたが、それは出来上がった家に求めている「ゆとり」に違いありません。くつろげる家、楽しい家、カッコイイ家。誰しも何かゆとりのある家を求めています。それをお手伝い出来る設計者としての「ゆとり」ある家づくり見つけたいと思います。

今回の講座は普段よりも大勢の方がいらっしゃいました。その中に、ピーカンの物件を手掛けられた工務店の社長さんまで。大きな事を言って、恥ずかしい事が出来なくなります。