


びわ湖のほとり、丘陵のゆったりした街区の開発地にこの住宅はあります。周囲はメーカーや地場の工務店や住宅会社の住いが少しずつ建ち並び、静かで落ち着いた雰囲気があります。
施主さんからの最初の連絡は、2006年の秋。それから考えると3年半の月日が流れますが、土地が決まって計画がスタートしてからのお付き合いはおよそ1年と少しになります。
はじめに土地を拝見しに行くと、お隣に周囲の建物とはひと際違った建築家さんらしき設計の住いが建っていました。設計屋にはちょっと挑戦的(?)な敷地を選ばれたな〜、とも捉えられそうですが、無味乾燥な住宅に囲まれるよりはむしろ違和感無く考えることも出来、特徴のあまり無い環境でひとつの方針を決める手掛かりになったように思えます。
敷地は北側道路に接した南北に伸びる矩形の土地です。南隣地が畑に使われている様子で現時点は開放され、東西は塞がれた状態になっています。
当初は中庭の要望もあり、計画案の中にはコの字型のプランもありましたが、最終的には水平反転トの字型のプランとなりました。こちらの敷地に窓を少なくしていただけている建築家さんらしきお宅に向かって庭を開放しています。1階にはLDKと水廻り+寝室。トの字の点の部分が2階を持ち2つの洋室と納戸があります。
キッチン上に設けた円形天井が見られますが、これは新しくなった火気使用室の規定を逆手に利用し制限範囲だけを防火処置した内装になっています。よって円を越えたところでは化粧の梁が制限無くむき出しになり、ガス器具の使用に関わらずタレ壁なしの開放した台所が実現出来ました。以前の規定では不可能な形状です。


また、屋根上には開放的なデッキ材バルコニーを載せています。その印象から船をイメージされ、家の名前が付けられました。
引渡後、手直し工事が少し残り、ひと月ほど住み始めたところへ後日伺った際。施主さんが工事で余ったデッキ材を使って縁側の延長をさっそく手作りされる様子や、(施主さんには申し訳ありませんが)小さな兄妹が怒られながらも階段を駆け下り庭の土で遊ぶ姿がとても印象的でした。

















Photo:P_kan:庄司洋建築設計事務所(庄司)
建築概要
【 敷地概要 】 ・場所 :滋賀県大津市 ・敷地面積 :155.39 ㎡ ・用途地域 :市街化区域・第1種低層住居専用地域・建蔽率50%・容積率80% ・第1種高度地域(5M+0.6/1<10M)・防火地域(なし・法22条地域) ・前面道路幅員:6.0m(北) 【 工事概要 】 ・工事種別 :新築 ・建築面積 :68.90 ㎡ ・延べ床面積 :91.57 ㎡ ・構造/規模 :木造 地上2階 ・最高の高さ :6.29 m ・軒の高さ :6.06 m ・構造仕様 :木造軸組工法 ・基礎仕様 :鉄筋コンクリート造ベタ基礎 【 主な仕上 】 ・屋根: 塗装ガルバリウム鋼板スタンディングシーム葺き ・外壁: 塗装ガルバリウムサイディング・杉板張り ・内装: 床 / 杉フローリング 壁 / 卵殻クロス・ビニールクロス・漆喰 天井/ 卵殻クロス・ビニールクロス・漆喰 【 設計/施工 】 ・設計 :庄司洋建築設計事務所(担当:中濱春洋) ・施工 :さくら工務店(担当:中岡誠/大工:平田擁市)[site] ・家具 :カリエラ(キッチン)