オイルヒーターの置場について(わが家の場合)

 ひと月ふた月前、嫁さんが義姉さまからオイルヒーターをもらって帰ってきた。モダンな暖房機に嬉々とする嫁さんに、いやいや待って、どこ置くの? って話になった。

 わが家は築そこそこ年の木造住宅。天井裏、屋根裏から見える断熱材はぺらっぺら。寒暖をものともしない高気密高断熱省エネ住宅にはほど遠く、寒暖を楽しむ気概のいる季節共生型住宅なのだ。もうお分かりの方はいらっしゃるだろうが、まともに使えばアッと言う間に電気代は跳ね上がり、立派な暖房機は押入れの奥へお蔵入りとなるに違いない。エコモードなんてスイッチも役に立つあろうはずもない。

 トイレにでも置いとくか?

 わが家で一番小さな部屋である。試しに使うにしても、電気代を気にせずいられるだろう。安易な発想。

 輻射熱暖房機のなかでもオイルヒーターは特に、寒いからと言って入り切りしながら局所的に使うものではない。基本はつけっぱなしにして、床壁天井四方八方にくまなく熱を伝え部屋全体を暖める。なんとなく「ほんのり暖かく」寒くない環境にすることが一番の理想である。手をかざしながら正面を陣取る石油ストーブのような使い方は、基本的に向かない。というかフルパワーにしないと満足できなくなる。
 そういう暖房の考え方だから、断熱材のしっかり効いた省エネ住宅でないと床壁天井の熱がどんどん外に逃げてしまう。結果、季節共生型住宅だと電気代がいくらでも掛かるうえに満足できない事になり、お蔵入りは必然。

 鉄筋コンクリートマンションで、オイルヒーターを使ってみたが思うように暖かくならないのは、冷たさを蓄えたコンクリートの床壁を暖めるにはそれなりの熱量が必要になってくるから。外気にさらされたコンクリートから伝わる冷たさと、輻射熱で伝える暖かさの対決のようなものである。部屋の位置などいろいろ条件が絡んでくるので、マンションが必ず寒いわけではもちろんない。外気に面する部分が多いほど暖まりにくいのは、体感でもよく分かる。
 外断熱で外気の冷たさを遮蔽したコンクリート建物ならゆっくり蓄熱させながら使うことができる。きっと快適な環境にもなるに違いない。それでも日中を留守にして節電のためにヒーターを切ってしまう生活だとうまくいかないのである。

 冷暖房の機種選定というのは、建物の構成に断熱方法や性能、そして生活スタイルとのバランスが考えの要になってきます。うまく機能させるには、多少の試行錯誤が必要と思うほうがよい。

 さて、オイルヒーターに占領されたわが家のトイレ。実に快適。
 夜中や起床すぐ、トイレに入って身震いする必要がなくなったのは、正直嬉しい。オイルヒーター据付け前、嫁さんの後に追いかけトイレに駆け込んだら、アッチアチのフルパワー暖房便座にビックリしたことも度々でしたが、近頃はありません。一畳ほどのトイレ空間で最低温度の設定にしながら使っているので、電気代に目をむくことも無さそう。もちろん、つけっぱなし。トイレにオイルヒーター? もったいないと思うなかれ。

 わが家のトイレは、現在もっとも居心地よい空間になりました。

ランマ付の掃き出し窓

 わが家の間取りはすこし昔風なところがあります。内縁(うちえん)とも言える1間の廊下を挟んで、食事も就寝もしている主室のタタミ8畳間があります。8畳間と廊下とは障子で区切られ、廊下には掃き出し窓がついています。そして、障子と掃き出し窓にはそれぞれ小窓の「欄間(ランマ)」が付いています。

 朝起きると最初の仕事は、掃き出し窓の雨戸を開けて、ランマの小窓を開けること。廊下の奥は台所とつながっているので、朝食の用意や、弁当の支度を始めて換気扇を廻し始めれば、小窓を開けないと排気がうまくいきません。小窓を閉めたまま魚を焼き始めようものなら、たちまち家中に焼き魚の匂いが立ちこめてしまいます。

 なぜそんな事になるかと言えば、今ごろの住宅では必ず付ける24時間換気などの給気のための開口がないからです。ですが、ブロロロロッと廻る換気扇の風量を思うと、直径10センチの換気穴が一つ二つで給気は足らないのでは?と正直思うところ。朝夕の食事準備の前、小窓必ず開けて新鮮な空気を入れる行動が、わが家では当たり前の日常になっています。

 掃き出し窓の向こうには、小さな庭を挟んですぐ公道です。しかしランマは目線の上にあるので、全開しても道行く人の視線は気になりません。向かいのお宅の2階からだとどことなく覗けなくもありませんが、ほとんど気にならないぐらいです。ランマのお陰で、心地よい季節なら気持ちよく窓を開けて過ごすこともできるのです。
 エアコンを掛け始める前の初夏なら、掃き出し窓と8畳間障子の両方のランマを開ければ、主室にも適度な風が入ってきます。こうした季節なりの使い方ができるのは、どことなく家と共に暮らしている感じがします。

 そんなこんなで、わが家の「ランマ付の掃き出し窓」をとても気に入っているわけですが、なぜだか、人様の住まい設計に取り入れたことがない! 昔風のすこし野暮ったいイメージが無くはありませんが、窓のカタログでは何度も目にしていたはず。なのに、これまで図面に落とし込んだことが無いことに、今更気がつきました。
 しかし、最近の窓カタログでは見た記憶が乏しい。改めて確かめてみると、昔からある窓シリーズにこそあれ、最近のシリーズ(特に断熱性を謳う窓)には記載が見当たりません。

 気になって某メーカーのHPから問合せてみると、「誠に恐縮ですが、ランマ付引違い窓はご用意が無いのが現状です。販売量が減少した為、廃番となってしまいました。」との回答。別メーカーで問い合わせても、「(××シリーズであれば)装飾引違い窓を段窓して頂く事にてランマとしてご使用頂けます。採用して頂く予定の窓サイズによって制作可否が変わってまいります。」との回答。
 んんん、ともかくほぼ標準では無いということだ。回答の通り需要がないのか。はたまたメーカーサイドの製品絞り込みなのか。それとも断熱性能が確保しづらい形状だからなのか。採用においては不用意に描けず、確認と注意が必要にならざるを得ない。

 これまで自分の設計にセレクトしなかったとは言え、定番商品な気がしていました。それが、無くなるとは思いもしなかったことです。設計上で替わりの工夫はあるでしょうが、自分が実際、便利に思っているので寂しいばかりです。
 わが家のランマ付引違い窓はいずれ遺物となるのでしょうか? 換気の事がコロナ関連のニュースで毎日取り沙汰されるこの時勢に、復活はないのか? 密かに期待するばかりです。

建築物省エネ法の講習会に参加してきました。

省エネ講習会資料

 去年の秋ごろ物々しく国土交通省から封筒が届きました。建築物省エネ法が改正されるから講習会に来て勉強しなさい。と言うものです。強制では無いですが、小心者の私は仰々しさに怖じ気づき、去年の暮れに住宅関連、今年に入って非住宅関連の省エネ講習会を受けました。

 広告に高断熱高気密と謳い文句をよく見るようになり、新築住宅の断熱性能は以前よりも向上しているはず。しかし先進国の中ではまだまだ基準値が低く、断熱後進国と呼んでよさそうです。全てでありませんが、日本ではどちらか言えば断熱に対する意識の低さがありそう。

 想像するに、四季に恵まれた日本で暮らすと、寒い地方はともかく一年を通して充分過ごせる環境が各地にあるからでしょうか。性能のよいエアコンもすぐ買いにいけるし、夏や冬をちょっと我慢すればそこそこ過ごせる。はたまた暑さ寒さを感じてこそ日本の住まい。みたいな感じでしょうか? 設計者だけでなく、建築主である住み手もまだまだそんな意識を持つ人は多いのだと思います。

 それはそれも間違いでないと、実はどこかで思っているフシが実は私にもあります。もちろん普段の設計では、真面目に省エネ計算もしています。反面、懐古主義かもしれませんが、夏は陽を遮り冬は陽を取り込む軒の深い家などなど、季節と共生する住まいのあり方にどこかロマンさえ感じています。
 しかしそんな理想になかなか届かず、屋根壁に一体どのくらいの断熱材を入れるべき?などなど、制度に負けて暗中模索に設計しているのが現実です。

 もちろん国交省の講習はそんなロマンは関係ありません。話を聞きながら感じるのはむしろ、CO2排出の削減に世界から立ち後れる日本の現状を打開するためにも、建物の省エネを推し進めなければなんともならない。という偉いさんの切実な願いもあるような気もします。
 来年の改正後には住宅建築のほとんどで、建築士から建築主へ省エネ対応の計画内容を説明するのが義務。だそうです。また、煩わしい省エネ計算を避ける住宅建設の従事者に、より簡単な算出で断熱性能を満たせる計算法を提示しようとしています。
 あれこれ指導は面倒くさいから、自然と省エネ住宅に流れて行くよう誘導する苦肉の策も見え隠れしています。

 学生時分、京都の冬の朝は布団の中でモジモジするのが楽しかった思い出。
 今現在、冬は年々暖かくなっていると感じます。今年の西宮の冬、息が白いと感じた日がまだありません。
 設計を始めたころ断熱は冬の話と思っていました。地域にもよりますが、今はどちらか言えば夏の話と捉えることが増えました。高断熱な住宅を計画し現場や完成後に実体験すると、正直心地よいと感じることも確かに増えました。日本の家の住まい方は、自分の思いと無関係に変わっていきそうです。