セミナー「江戸時代の大工さん」- 大工頭中井家と大工組 –

江戸時代の作事願書
昔の確認申請書。墨の印鑑がなにやら恰好良い。

 大阪くらしの今昔館館長・谷直樹先生の講座を聴きに行きました。

 江戸時代に活躍する中井家という大工頭の系譜や実績を1時間半、憶える間がないほど次々と紹介された濃密な講義でした。スライドも盛り沢山、興味深い話もいっぱい聴けたのですが、情報量の多さにナニがナンだったか既に分からなくなってます。(笑)
 なんとか思い出せるところをいくつか。。。

 まず中井大和守(やまとのかみ)初代・正清という人物。徳川家康に抱えられ二条城・江戸城・名古屋城など名だたるお城を次々と建てた大工棟梁の親分です。そして、十万石大名と肩を並べる従四位下と言う役職を授かっていた事は、大工という職業人では前代未聞。
 時代も時代、城郭を建てるにはスピードと技術が必要、ひと声掛ければ全国のスゴ腕大工を集められる、今で言えば大工協会会長?です。話によれば、急を要した名古屋城の天守閣は、集めた大工で3ヶ月の突貫工事で建てたのだとか。現代ではそこまで技術ある大工さんが揃わないので、1年や2年間違いなく掛かるそうです。もし建てられなかったら打ち首になったのかもしれませんが、想像するだけでも驚愕な話です。

 その後も繁栄続く中井家は、お城だけでなく寺社仏閣・御殿も次々仕事をこなします。数もあるだけ技術も上がりゼネコンさながら、日本の文化遺産の多くは中井家無しにあり得ません。またそうした仕事の資料が今の中井家に数多く残され、それらを読み解くことで歴史も辿れます。いわゆる施工図が残っているので、それを頼りに史跡を探ることも度々。そこから新たな歴史の解釈もあり得る訳です。
 建築士に身近なところでは、江戸時代の作事願書(今で言う確認申請書)の実物を拝見しました。当時の贅沢禁止令から庶民は必要以上に大きな建物を建てさせない規制がありましたが、そうした規制から逃れたどうみてもサイズオーバーな違反建築も資料から推測できるとか。

 他に面白いところで、渡来した象を将軍さんが見物するときの設営図とか。(余談では、その後の像のエサ代が偉いことになっていたそうです。)。。。などなど、谷先生は話が尽きない様子でした。

 講義最後にオマケ話もいただきました。谷先生はNHKドラマなどの風俗考証などもされているそうです。今、放送中の「スカーレット」も。
 ドラマに現れる街の風景には、突き当りのT字路セットが多く観られる筈。普通の十字路交差点では、ずっと先までセットを作るのが大変だからです。江戸の風景には本来T字路は少ないはずなのだけど、もろもろ諸事情から。。。
 ほ~、なるほどなるほど。

山下和美 著「数寄です!」

山下和美 著「数寄です!」
古いiPadが、今はコミック専用機になってます。。。

 昼食に、ヨメさんが用意してくれる弁当を事務所で頬張りながら、電子コミックを読むのが実は最近の楽しみになっています。お行儀よいとは言えませんが、食事の間に2~3話ぐらいを読みます。たまに面白くなって続けて読んでしまうことも。

 最近は、山下和美の「数寄です!」3巻+続2巻の計5巻をようやく読み終わったところ。ご存知の方も多いかと。

 作者さんが、数寄屋の自宅を建ててつつ数寄者を目指す奔走エッセイコミック?。和風好きな若い建築家と偶然に出会うことから、数寄屋づくりをはじめるのは一般的な家作りから見るとちょっと特殊かも。けれど読み進めると、ちょっと気負って設計士と家作りを目指す方には取りかかりのイメージになります。数寄屋である必要はなく、今風な建築事務所との付き合い方の参考にもなると思います。

 作者自身の個人的な経験を元にしているため、万人向けではないかもしれません。
 ですが、家作りをする本人の視点だけでなく、設計者サイドのことやその付きあい方、住まい作り周辺・その後の様子も描かれ、一般的な家作り本では見ることのない個性的な家作りのプロセスが、幅広い視点で描かれているように思います。また各話ごとに設計者のコラムやインタビューが用意され、建築のことだけでなく和風入門書にもなりそう。実は結構、感心しながら読んでおりました。

 以前に「漫勉」と言うNHK番組で、この山下邸が映し出されていました。
 うわ何!?、この漫画家さん、エラい渋いところに住んでんナ~、なんて思っていたのですが、そのタネ明かしを教えてもらった気分。設計者(作中では蔵田さん)も実在の方で、山下邸をきっかけに数寄屋建築家として活躍されるようになっています。

 これから住まい作りを考え始める方に是非、参考に読んで楽しんでいただけたらとご紹介します。

 そういえば、読み途中になってしまった山下和美の「ランド」。その後が気になり始めました。。。

展覧会「大工さん展」と「建築と社会の年代記」

建築と社会の年代記―竹中工務店400年の歩み―神戸市立博物館

 ようやく冬らしい寒さになり、ほんのチラっとですが、この冬はじめて雪を見ました。寒空の中、大工さんと竹中工務店にまつわる展覧会を観てきました。

 まずは、竹中大工道具館で開催中の「大工さん展」近世の職人文化とその伝統。

 解説の中に書かれていたことですが、特に関わりの無い方でも何気ない会話の中に「大工さん」とさん付けで呼ぶ習慣があります。なぜか親しみ深い。映画やドラマの時代劇には、必ずと言ってよいほど「大工さん」が現れます。登場人物としては外せない職業。展示に紹介もありましたが、落語には人情もろい大工さんが沢山出ているような気がします。
 昔々から建築工事は日常茶飯事な身近なもの。それだけ就労人口も多く、当たり前にある職業のひとつに感じていたのだと思います。しかし今は3Kやら言われて大工さんが減っているのが実情ですし、出来上がりのマイホームに移り住むだけで工事過程を覗くこともない施主さんも増えているでしょう。親しみを込めて呼んでいた「大工さん」は、だんだんと過去のものになりそうな気もします。

 その足で、神戸市博物館で開催中の「建築と社会の年代記」 竹中工務店400年の歩み  も観覧に。

 竹中工務店と聞くと、ゼネコンの一社ぐらいだけに思っている方も多いのではないでしょうか? 建築に携わらなければ、私もその一人。ですが建築士を目指す学生時分は、建築家を多数輩出している竹中工務店の設計部は憧れの一つ。才覚あるなら行きたいぐらいに思うのは当然でした。
 展覧会の見出しにもありますが、竹中工務店は400年の歴史になるそうです。明治の終わり頃に、工匠・竹中藤右衛門が神戸の地に創立、とあります。町の工務店の一つだった訳です。当初から施工技術だけでなく、建築意匠にも拘る社風があり、今では建築界のエリート集団なイメージさえもあります。
 展覧会は400年を一堂に会するとさすがエライ物量です。じっくり見たわけでもないのに3時間近く費やしました。厳選し展示された昔の青焼き図面が美しく、手書き図面の設計者の苦労が偲ばれます。これらは氷山の一角。このとんでもない資料群を保管するだけでエライ事になりそうです。とは言え何もかもがコンピュータになり、モニタに映されるCAD図面で展示が済まされるようになると、間違いなく寂しさを憶えてしまうだけでなく、そこに人が介在していることさえ気付かなくなりそうです。

 ふたつ展覧会を観ながら、「大工さん」に及ばずとも「設計屋さん」を知ってもらい、さらに過去のものにしない為には、今をもうちっと頑張らんとアカン気がしました。

竹中大工道具館 | 大工さん展近世の職人文化とその伝統
竹中大工道具館 | 大工さん展近世の職人文化とその伝統
竹中大工道具館 | 大工さん展近世の職人文化とその伝統

琵琶本語り|片山旭星演奏会

琵琶本語り|片山旭星演奏会

 嫁さんの誘いで「琵琶」の弾き語り演奏?を、京都市内のひっそりと佇む和楽器屋さんへ聴きに行きました。

 琵琶の演奏? 珍しい楽器だな~。頭に浮かぶのは昔話な「耳なし芳一」か、つい最近放送していたリメイクアニメ「どろろ」。盲人のお坊さんだか、アンマさんだかが背中に背負って、死者の弔いやらなにやら物悲しい音で語り継ぐ。このぐらいの貧困なイメージしか浮かばない有り様です。
 実際に聴いた印象はやっぱり暗かったのだけど、それは語りの内容からかもしれません。琵琶の音色自体はとても自由な感じです。失礼な話すごくイロイロな表現力を兼ね備える楽器だと初めて知りました。ビヨヨ~~ン、ボヨヨ~~ン。とインド楽器のシタールのような音を奏でれば、ジャカジャンジャン。三味線にも似たような音も響かせる。幅広い抑揚のある音色で場を盛り上げたり、鎮めたり。。。
 座敷で座布団に座りながら聴衆も15人ほどの小さな演奏会がさらに良く、とても楽しめ満足しました。

 帰ってからネットで琵琶のことを調べてみたら、勝手に思っていたイメージはどうやら間違いでもなさそうです。7、8世紀ごろに中国から入って以来、日本の中で独自の派生変遷がありますが、平家物語を語り継ぐ盲人音楽家に占有されるやら面白い歴史が原因っぽいです。勝手な解釈で言えば、琵琶はちょっとマニアック感が過ぎて、全体的には琴や三味線に地位を奪われた感じがします。
 語り物の伴奏に使われることが多かった琵琶ですが、平家物が中心で内容がやや暗め。江戸時代になって合戦物で勇壮なものや、町人文化の優美なものなど幅広く発展はしたものの、残念ながら現在に向かう間は下火になってしまったようです。

 自分自身もこれまで勝手なイメージを持っていましたが、琵琶の生演奏を聴けば、若いアーティストも興味を持つに違いありません。琴や三味線よりも柔軟でワールドワイドな気さえします。琵琶がもっとポピュラーな楽器になれば面白いのにと思いました。