ホンモノとニセモノの境目は?

like a tile

建売住宅や分譲住宅の設計の手伝いしてみて、工業化とか製品化と言った言葉と、手作りとか職人技と言った言葉が以前に増して引っ掛かるようになりました。直接依頼を受けて委託物件の設計をしていると、建物のアイテムはひとつひとつ作らないとイケナイと言った義務のような気持ちが働いて、寝る間も惜しんでホンモノを目指そうと意気込む事もあります。もちろん自分なんかより数倍、数十倍の労力をかけて設計をしている建築家は世の中に大勢いらっしゃいます。なので、恐れ多くも自慢の話ではなく、むしろ勉強も労力もまだまだ足りないことを切々と感じている今日この頃です。

ただ、いままであまり真剣に見たことが無かった既製木製建具のカタログを開いてみて、結構よく出来たデザインの物もあることが分かったし、メーカーによれば納まりのバリエーションが思った以上に揃っていることも最近驚いたことのひとつでした。既製品を使えば設計の自由度は無くなるという錯覚で、避けていただけに他なりません。もちろんオリジナリティという視点だけで考えれば、目移りするように見えてもやはり限界はあります。しかし、世の中の建設事情や住宅事情を踏まえ、トレンドを少しでも押え世の中のニーズに応えようと開発された商品だから侮る訳にはいきません。その傾向と対応の早さはメーカーにますます必要になってくるでしょうから、使う使わないは別に、こうした製品の動向も注意して見ておく必要があるように感じだしました。

木製建具は建築の要素の中でもデザインアイテムのひとつとして捉えやすいだけに、「既製品」というものにどことなく拒否反応を持っていたとも言えます。建物の外装で言えば、サイディングもそのひとつ。以前は正直安っぽい、なんだかプラスティックで出来た様なにテラテラ感が気持ち悪い。ニセモンはニセモンでしかない。みたいな偏見でいたのですが、最近の商品をよくよく探してみると、コレいいじゃんと今まで口にしなかった言葉が出てしまいます。自分が目を背けていた間に、技術はどんどん上がって知らなかっただけ。みたいな事になりかねません。製品としての性能も上がっているでしょうし、偽物を本物にしてしまおうとするメーカーの意欲は、見習うべき事も実は多いはずです。

細かい事を言い出せば、既製品無くして設計は出来ないともいえますが、取りあえず今は意匠的な話として。

話を少し戻します。既製品建具や家具の面材も本当によく出来ています。ウソっぽいのももちろんありますが、ホンモノっぽいのもあります。ポリ合板やメラミン合板と言った化粧のベニヤ板も同じで、昔のプリント合板とは比べられないぐらいに良く出来た物もあります。シートのものもあります。実際、自分の設計した家具などの中で本物の木とニセ物の化粧合板を並べているのに、自分が見分けつかなくなる事さえあります。ホントに。本物の木の部分で塗装が上手に出来すぎると、ますます見分けがつかなかったり。そうだとすると、例えば紙のような薄い単板(本物の木を薄くスライスした板)を練り付けた化粧ベニヤ板を使う意味はどこにあるのだろうか。とさえ思えそうになります。
その昔、事務所の天井板は(古い建物だし。。)本物の板と思い込んでいたのですが、大掃除のある時に近づいてみるとプリントが剥がれている箇所を発見し、自分の眼が如何に節穴であるかを知りました。

考えてみれば、薄い単板を貼った化粧ベニヤ板とて工業製品です。考えれば考える程、工業化(あるいはニセ物)と手作り(あるいは本物)の境界は曖昧です。エコロジー、自然素材、ホルムアルデヒド、地球温暖化などなど、関連する語句はますます増えてきそうです。技術にも材料にも工業製品と手作り品は入り交じっているのが多くの建築の現状だと思います。自分はどこまでの工業化を許し、どこまでの手作りを守るのか。それもまた建築を考える上で大きな要素になるのでしょうし、安易な事は言えないと実感しています。ただ勉強と経験を積むしかその対処は無く、でなければ自分のスタンスを施主さんにきっちり説明することが出来ないように思います。

 

写真の建物は外装とエントランスのみリフォームしたビルで、以前にデザインをさせて頂いています。茶色い外壁部分は元々はベージュっぽい塗装を施されていましたが、砂岩”風”樹脂シートを貼り直しました。下のまばらな所はスレート”風”タイルです。離れて見ると結構重厚感が出ています。黒のルーバー部分は、エアコン室外機の目隠しになっています。デザインと指示だけ渡しておいて、出来上がりを見たのは実は最近だったのです。思った以上によく出来ていました。(笑)

擁壁の上?崖の下?

SHIKICHI

土地探しをしている施主さんから、ウラの擁壁が気になるのだけど安全でしょうか?と質問される事が今までよくありました。街中の平坦な土地を探しても、意外に擁壁の絡む土地は多いものです。先日の記事()でも、奥の方に古めかしい石積みの擁壁が見られました。こうした擁壁は結構厄介なものです。

宅地造成の法律では「敷地の安全」が名目にあるだけで、これは「建物の安全」を意味するものではありません。この微妙なニュアンスはなんだかいやな感じです。その時代において標準的な建物の荷重を考慮して基準は設定されていますが、真新しいコンクリートの擁壁で囲まれているからそのまま家を載せても安全ですとは、詳細な設計を進めてからで無いと本当のところ分かりません。また、目的の土地が擁壁の上なのか、擁壁の下なのかで考慮すべき内容も変わってきます。

擁壁上の土地の場合。

現行の基準では、擁壁上の土地には上載荷重を最低10KN/m2 以上とされていますが、これは1m2 あたりにおよそ1tの重さを載せれると言う意味で、木造2階建ての重さをおおよそ想定した目安になっています。では建物の重さは?というと。

構造 自重+積載荷重
木造2階建 600kg/m2
木造3階建 900kg/m2
鉄骨2階建 750kg/m2
RC造2階建 3,200kg/m2

この表は概ねのイメージですが、3階建てだと結構一杯ですね。しかもこの重さはしっかり厚みのあるベタ基礎などで平均的に重さがかかった場合です。そう聞くだけでも、なんとなく余裕の無い話だと思えてしまいます。なので、擁壁に近づく程建物の安全は損なわれると考えるのが妥当です。

少し郊外の切り開かれた開発地に行くと、見晴らしは良いのでしょうが、3階分ぐらいあるだろう高い擁壁の上に家が軒を連ねている事があります。同業者の仕事を疑う訳ではありませんがやっぱり怖い感じがします。 昔の石積の擁壁ならなおさらです。古い宅地の擁壁だと5KN/m2 以上という基準の時期もあります。単純に平屋が目安であり、まだ郊外では2階建てが少ない時代の基準だったわけです。その時は、まだまだゆったり建てれるイメージがあったのでしょうね。

擁壁下の土地の場合。

擁壁や崖が背中にあると崩れはしないのか心配になるものです。ところで建築の基準では、崖の高さと同じだけ逃げなさい。とあります。しかしそんなに離れたのでは、建てれる土地が無くなってしまいますね。しかし、もしコンクリートの裏ごめもない昔の石積みの擁壁があれば、同じことが言えます。

もし基準を満たした擁壁を背中にしていても、その擁壁の上に建物があるなら要注意。上の建物が杭など何の配慮も無しに建っているとすれば、その擁壁に建物の重さが掛かって微妙なバランスで成り立っているかもしれません。しっかり考慮されているのが確証が無ければ避けるのが懸命です。

ところで崖や擁壁は上から崩れると思われがちですが、実際には重さを抱えてスプーンですくう様に土が滑ると考えます。山間部の道路の崖崩れなどの写真を見ると、丸く削り取られたような事になっているのが分かる筈です。擁壁の上端あたりを中心に上の土地から下の土地まで根こそぎゴソっとすくい取るように滑る可能性があるのです。崖の高さと同じだけ逃げなさい。と言うのは話はそうした現象から考慮した話なのですね。
崖は上から崩れるとばかり思っていたところ構造設計の方にその話を教えてもらい、崖って怖いな〜と上ばかり見上げていると足下をすくわれるのだと知りました。

ちょっとした言い訳

以前ぴーかん事務所に勤めていたスタッフの一人が、神戸の方へ仕事に来たついで遊びに寄ってくれました。世間話をしている内に当事務所のサイトの話になる。庄司さんはホームページの構築に時間を掛けすぎです。その時間を別な事に向けた方がいいんじゃないですか。と、釘を刺された。まま、ごもっとも。

今年の始め気分転換にブログを変えたのが発端で、サーバーの不具合やらに巻き込まれた勢い、本サイト諸共作り直してしまったから、言われる通り結構時間を費やしてしまったのは確か。その上、ブログの組み立てが分かって来るとついついのめり込み、アレコレ細かい所が気になり始めて、ますますのめり込んでしまった。そろそろ落ち着いたとは言え、ブログ構築関連の記事を見つけてしまうと、うっかり時間を忘れて読んでしまったりする。

言い訳をするつもりでは無いが単に言い訳にしかならないのだけど、以前からホームページやブログをやっていると、建築に通じるものを感じてしまう。全体のデザインからディティール。構成やら使い勝手など、その組み立てを考えていく作業が建物の間取りやデザインを考え進めるのに近い。静的なグラフィックでは無く、動的な要素があるからだろうか。ここまで来てもらったら次の扉を開けてください。廊下に突き当たったら右に曲がって下さい。そこでクリックです。そんなイメージを頭の中で描いてみる。

独立し始めたころ FLASH というアプリケーションにしばらくのめり込みました。もともとアニメーション好きだったこともあり、お手軽にアニメが作れるというソフトです。ご存知の方も多いと思いますが、今ではホームページ上のアニメーションや動画、必要ないのに動いているナビゲーションなど、インターネットの世界で最前線のインタラクティブ技術となっています。その FLASH を使ってアニメーションやインタラクティブなグラフィックなどを作って遊んでいたのです。図に乗ってコンテストに応募したりすると、佳作だったか何かの賞もいただけました。ともかく、こうしたギミックな仕掛けに非常に弱いのです。ブログもしかり。
その後 FLASH については中村勇吾という方のサイトを発見し、これはオレには出来んと観念したところで一気に熱は冷めました。当時の自分にとってそれだけスゴい衝撃がありました。

話が少しそれますが先日、宮崎駿監督の出演したNHKの番組を録画で観ていて、宮崎監督は「人に楽しんでもらいたい一心」でアニメーションを続けていたと話しをしていました。先の中村勇吾氏もあるサイトのインタビューで同じ事を言っています。クリエーターとして当たり前すぎる答えかもしれませんが、僕自身もそうでありたいと思います。建築もサイトも「人に楽しんでもらいたい」それを目指したいと思います。

えらく長い言い訳でしたが、元スタッフの言葉から「ナンデこんなにやってんの?」という素朴な心の揺らぎに、たまたま最近観た中村勇吾氏、宮崎駿監督の言葉を思い出した次第です。まだまだ次元が違いますが、そう思ってもらえる様にやって行きたいのです。

ちなみに中村勇吾氏は、もともと建築家志望からウェッブデザイナーに転身した方です。それを知った瞬間はかなり揺らぎましたが。(笑)